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【掲載情報】代表・山上のインタビューが『#これ誰にお礼言ったらいいですか』に掲載されました!

UDCast運営会社であるPalabra株式会社代表・山上庄子のインタビューがパーソル(PERSOL)グループnote『#これ誰にお礼言ったらいいですか』に掲載されました。 Palabra株式会社やバリアフリー字幕、音声ガイドについてだけでなく、それらが普及する過程や山上自身の話などさまざまなお話をしています。是非ご覧ください。 邦画も字幕で楽しめるように。バリアフリー字幕をつくる人たちにお礼を伝えてきたhttps://note.com/persol_group/n/n66fdd69f155f

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「合理的配慮」って何だろう? みんなと考えるコラム記事

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音声ガイド制作者がみる「ぶぶ漬けどうどす」

UDCastを運営する株式会社Palabra(パラブラ)では、字幕・音声ガイドの制作を行っています。 音声ガイドとは、視覚に障害のある方も一緒に映画を楽しめるよう映像を言葉にしたものです。スマートフォンにUDCastアプリをインストールし、イヤホンを使って聞くことができます。音声ガイド制作は作品の印象を左右する責任の重い仕事です。音声ガイドの言葉によっては、作品に対する評価すら大きく変えてしまう可能性があるからです。 Palabraでは、視覚障害・聴覚障害の当事者を含めたガイドのモニター会を行い、当事者に伝わるかどうかを検証しながら作られます。この記事では、そんな音声ガイドを制作するスタッフの声をお届けします。 今回お届けする作品は「ぶぶ漬けどうどす」。古都・京都を舞台に、京都の老舗扇子店の長男と結婚し、東京から引っ越してきたフリーライター・澁澤まどかが引き起こす大騒動を描いたシニカルコメディです。 この映画の音声ガイド依頼をいただいた際、京都に5年住んだことのある私が書かずして誰が書こうか、と思いお引き受けしました。舞台は老舗の扇屋。はからずも、京都で伝統文化に携わる仕事に携わっていたので、何度も共感しながら鑑賞しました。 不思議な構図をさりげなく伝える セリフの妙や俳優さん達の演技が素晴らしく、音声ガイドを通して登場人物の感情を伝えることに苦労はしませんでした。しかし、独特な位置関係を説明的になりすぎないようさりげなく伝えることには苦労しました。 本作の舞台は、京都の「町家」。店舗と自宅が同じ敷地に建っているなど、特殊な特徴があります。また、この作品では「普通ならこう立っているだろう」という予想に反した場所に登場人物が立っていることが多く、視覚障害のある方が思い描いている位置関係と何度か齟齬が生まれることがありました。 晴眼者は変な構図を見て違和感を覚えても、次のシーンを引き続き目で見続けることができます。しかし、視覚を使わずに鑑賞している方は、音声ガイドの言葉によって立ち位置のイメージがこんがらがってしまうと、映画に置いて行かれてしまいます。だからこそ、齟齬のない説明が必要です。     ©2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会 また、スクリーンというフレイムで切り取られた映像を見る晴眼者に対し、視覚障害のある方の中には、舞台の中に入りこむような感覚で鑑賞している人も多いです。よって、場当たり的に部屋の造りを説明すると、カメラ位置によって左右の位置関係が化し迷子になってしまいます。 さらに、音声ガイドで見たままの情報を補完しても、晴眼者が見て認識した時と同じ印象を持ってもらえるわけではありません。晴眼者は全ての視覚情報を意識的に把握するのではなく、無意識に大まかな位置関係を把握しています。多くの晴眼者は町家の構造を正確に覚えていません。しかし、ご飯を食べている座敷は床の間がある造りになっていることや、庭と反対に行くと台所や玄関があることなど、なんとなくの位置関係は把握しています。こういった晴眼者の視点も踏まえ、全てを正確に伝えるのではなくさりげなく家屋の構造や立ち位置を伝えるよう心掛けました。 音声ガイドで「どう聞こえるか」も考える 音声ガイドでは、「言葉」によってイメージを左右されてしまうことがあります。音声で聞くとどう感じるのか、こちらの意図したとおりにイメージが伝わっているのか、当事者や制作者とコミュニケーションを取りながら音声ガイドを作成しています。 この作品では、主人公の「まどか」が窓から顔を出して呼びかける場面があります。この様子を音声ガイドで説明しようとすると、「まどかがまどか(窓か)ら顔を出す」といったように意図せずダジャレになってしまいます。 音声ガイドでは「どう聞こえるか」も大変重要です。「くだらないダジャレ」に聞こえて作品を邪魔しないよう、原稿の文言を変えています。また、喋らない登場人物の説明も大変です。視覚を使わない方々は、声で人を判断します。声が聞こえない人物はイメージをつかむことができず、晴眼者で言うと顔が見えないような感覚に陥ってしまいます。視覚を使わない方にも、晴眼者と同じスピードで声を出さない登場人物に気付いてもらうよう音声ガイドを作らなければなりません。 映画終盤に、謎めいた中年男性が澁澤家にやってきます。有無も言わさずまどかが追い払ってしまうので、男性は一言も発さないまま退場します。このタイミングで名前は判明していませんし、最初に出会ったイメージをうまく伝えるためにも役名で呼ぶことは避けたいです。どう表現するのが良いのでしょうか。 音声ガイドの第一稿では、以下のように表現しました。 男の登場1回目:屈強そうな男、帽子を被り、そそくさと出ていく。 男の登場1回目:(小川が名乗る) 屈強そうな小川。 まどかは、「男」のことを上田社長がよこした刺客だと思っていました。そういったイメージを損なわないよう、はじめから「小川」とするのではなく「男」とガイドすることにしました。屈強そうな見た目だったので、「屈強そうな」という言葉でつなげられると考えたのです。 しかし、モニター会で意見を聞いたところ、この表現では追い払われた男と小川が結びつきませんでした。そこで、「帽子」ではなく「キャップ」に言い換えて印象を強くしたらどうか?と聞き、原稿を書き換えました。第二稿では以下のようになりました。 男の登場1回目:屈強そうな男、キャップを被り、そそくさと出ていく。 男の登場2回目:玄関に、屈強そうな男。 (小川が名乗る) キャップを脱ぐ。 音声ガイドは、映像を言葉で描写するだけでなく、音声化した時にどう聞こえ、それを聞いた人がどんな風景をイメージするかまで気を配る必要があります。このように、セリフのない場面でも晴眼者と同じように楽しめるように制作しています。 衣装も重要な情報として伝える 「ぶぶ漬けどうどす」の登場人物は変わった人ばかりです。その中でも、中村先生という美術大学の先生は特に変わっていて、おしゃべりの仕方も風変り。     ©2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会 あまりにもおかしいので音声ガイドで何か言及したいのですが、とにかくセリフを畳みかけるので何も入れられない。セリフを畳みかけているからこそ、説明せずともこの人のおかしさはモニターの皆さんに十分伝わっていました。そこで、音声ガイドでは中村先生の装いを主に説明することにしました。 *ぼさぼさ髪で、ツイードのジャケットにネクタイ*スーツに下駄を履いた中村*中村のシャツには青や黄色で植物が描かれている。 これだけで中村先生が変わっているのが想像できますし、喋りが加わるともっと”良さ”が引き立ちます。 また、中村先生だけでなく、まどかの漫画の相棒である“安西ちゃん“の服装も説明しています。安西ちゃんの服に入っている緑系の色は、とあるシーンでのヒントになりうるので欠かさず説明しています。(気づかない方もいるとは思いますが) 劇映画においては、衣装を表現手法として用いていることが多々あります。見えないから衣装は関係ないとするのではなく、見えてないのだからこそ説明して伝えるという姿勢が重要です。 巧みな脚本を限りなく生かす 十三代続く扇子屋の町家と聞くと、すっきりと整った誰もが憧れるような暮らしをしているようなイメージを持つと思います。実際の澁澤家はどんな家なのでしょう。音声ガイドの原稿を見てみましょう。 まどかが玄関で靴を脱ぐ。上がって、右側の部屋へ入る。笑顔になる。(注:彼女は老舗の嫁として赤裸々リポートを書くのが仕事なので、町家そのものにときめいての笑顔です)なげしに着物がかかっていて、洋服ラックが置かれている。立派な仏壇。床の間にテレビ、違い棚には壺や人形、アイロンが置かれている。 日本の伝統的な家屋にある床の間は、格式の高いスペースで神聖な場所と教えられることもあります。しかし現代では、澁澤家と同じように物置きと化している家が多いのではないでしょうか? そして、主人公まどかの言動も秀逸です。京都の人からしたらイラっとするだろうなという絶妙な塩梅で、劇中の雰囲気をリアルに感じ取ることができます。 この家の台所は土間になっていて、「おくどさん」というご飯を炊くためのかまどがあります。まどかは、おくどさんで炊くご飯は「おいしい」と無邪気に言い、義母である女将は一言「そうか」と優しく答えます。言葉だけなぞると平和なお嫁さんと義母のやり取りに見えるのですが、見ている側にはどこか引っかかるものがある。 そうして映画を見ていると、終盤に室井滋さん演じる女将がまどかにある言葉を放ちます。今までの違和感の答え合わせをするような女将の発言にやっぱりー!となり、ちょっと意地悪な爽快感もある作品です。 この作品は京都に暮らす人々の機微に触れられる楽しい映画なので、視覚障害のある方にもない方にも是非味わってほしいです。 (文・松田高加子 編集・樋田昌之) 公式HPはこちら

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オープンチャットってなに?

LINE 株式会社が提供する無料のSNS サービスです。共通点がある人同士でトークや情報交換ができます。「オープンチャット」はLINE の友だちになっていなくても匿名で参加することが可能で、トークルーム内で気軽にチャットをしたり情報をキャッチできます。興味関心事や日常生活に密着した話題について、幅広い場面でコミュニケーションを楽しめます。UDCast コミュニティでは「オープンチャット」を利用して、あらゆる人が関わり合える、楽しくて真摯な場作りを目指しています。

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