新藤兼人賞2024【UDCast賞】レポート
山中瑶子長編初監督作品『あみこ』バリアフリー化決定!!
先日、12月6日(金)に、「新藤兼人賞2024」第29回授賞式が行われました。
「新藤兼人賞」は、日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが、その年度で最も優れた新人監督を選ぶ賞です。毎年、金賞受賞者には、賞金50万円とUDCast賞(バリアフリー版制作、および、UDCast提供)が、銀賞受賞者には、賞金25万円が贈られます。
<イベントレポート>
1996年に「優秀新人監督賞」としてはじまった本賞は、今年29年目を迎えました。劇場公開長編実写映画として、デビューから3作品目以内というレギュレーションの中、本年は215作品が選考対象となりました。授賞式には、金賞を受賞した『ナミビアの砂漠』の山中瑶子監督、銀賞を受賞した『侍タイムスリッパー』の安田淳一監督、プロデューサー賞を受賞した関友彦プロデューサーが登壇。そのほか、最終選考に残った作品の監督・プロデューサーなども出席し、日本映画界を背負うクリエイター陣が集結した豪華な式典となりました。
山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』は、配給のハピネットファントム・スタジオにより、バリアフリー日本語字幕とバリアフリー音声ガイドをPalabra株式会社(パラブラ)が制作。公開初日からUDCastアプリに対応、一部劇場で字幕付き上映も実施されました。
例年、金賞受賞作品が既にバリアフリー化されている場合は、次回作のバリアフリー版制作、および、UDCast提供としていますが、今回は監督の意向により、長編初監督作品『あみこ』をバリアフリー化する運びとなりました。
また、主催の日本映画製作者協会がNetflixと新たな取り組みを始めることが発表されました。本年の「新藤兼人賞」受賞者、および、最終選考に選ばれた監督・プロデューサーを対象に、Netflixへの企画提案の機会が設けられます。提案本数に上限はなく、企画形態なども自由。選出作品は、Netflix作品として制作、全世界に配信されます。
<受賞者コメント(抜粋)>
金賞: 山中瑶子(やまなか・ようこ)監督 『ナミビアの砂漠』
プロデューサーが選ぶ賞を受賞できて、とても光栄で嬉しく思います。
『ナミビアの砂漠』は、別の作品に取り組んでいた際に、「河合優実さん主演のまま、オリジナルで好きに書いてみるのはどうですか」と提案いただいたことから始まりました。「私は脚本が書けない」ので、「脚本執筆部屋で見張られるというのはストレスのかかる状況」なのですが、素晴らしいプロデューサーがいてくださったおかげで、リラックスして書くことができました。また、「私はみんなで一丸となって映画を作るというのが好きじゃない」のですが、バラバラでいても作れるんだと思えるほど豊かなスタッフを集めてくださって、本当に感謝しています。
パラブラと取り組んだバリアフリー制作もとても楽しかったです。長編初監督の『あみこ』でまたご一緒できることが嬉しいです。もっと精進して頑張ります。ありがとうございました。
講評: 山中監督の作家性と芸術性が大爆発していて素晴らしかったです。映画表現の自由さを再認識させられた作品でした。今年を代表する一本にふさわしいと思いました。選考会では、満場一致で決まりました。
銀賞: 安田淳一(やすだ・じゅんいち)監督 『侍タイムスリッパー』
自主映画の大先輩・新藤兼人さんの名前がついたこのような賞をいただけて、本当に嬉しく思います。
『侍タイムスリッパー』は、撮影所、ミニシアター、シネコン、お客様など、映画に関わるみなさんの助けによってここまで来られました。監督が出演者として11役以上を兼ねる、「自主映画丸出しの作品」を選んでいただいたことに感謝しつつ、「リスクのある危ない橋を渡られた」と思いました(笑)「小学生5年生以上、90歳ぐらいまで」のみなさんが映画館に来て、笑って、楽しんで、さあ明日からも頑張っていこうと思えるような映画を、「費用対効果を配慮しながら」作っていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
講評: 議論に議論を重ねて、決定しました。時代劇への愛情と熱量、安田監督のエンタメ力(りょく)を高く評価させていただきました。とてつもない力作でした。
プロデューサー賞: 関友彦(せき・ともひこ)プロデューサー 『箱男』 『あんのこと』 『若武者』
「新藤兼人賞」という気骨ある賞をいただけたこと、とても嬉しく思っています。ありがとうございます。
『箱男』は、1997年に一度映画化を進められて白紙になった「幻の映画」でした。2013年に、石井岳龍監督から「関さんとやりたい企画がある」と相談され、その11年後、ハピネット・ファントム・スタジオとご一緒することになりました。97年当時に出演が決まっていた永瀬正敏さんと佐藤浩市さんにも出演いただくことができました。「映画は集団創作だ」という監督の言葉通り、『箱男』は集団創作ができた作品だからこそ、この賞を受賞できたと思います。
『あんのこと』は、実際に起きた事件に基づいた映画です。当時はコロナ禍という状況で、映画として成立させることに困難が伴いました。ですが、牽引力のある入江悠監督と、今年を象徴する俳優の一人でもある河合優実さんと一緒に制作できたことは、大変意義がありました。社会への問いが多い作品だったため、多くの方に観ていただけて嬉しかったです。
『若武者』は、コギトワークスと立ち上げた新レーベル「New Counter Films」の第一弾作品でした。企画・制作・配給を社内で行い、国内のみならず、海外にも直接届けることを目的としたレーベルです。本作は、国内で25館、海外で4館上映することができました。新たな選択肢を作るべく自分たちで行動を起こした結果、イギリスなどに新たなコネクションができ、『箱男』でも海外上映が叶いました。
この賞を受賞できたことは、大きな自信になっています。映画のプロデューサーが、若い方の憧れの職業になるように、今後も力強い映画を作っていこうと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。
金賞受賞の山中監督は、『ナミビアの砂漠』の際に字幕と音声ガイドのモニター検討会に参加され、バリアフリー版の制作に関わられました。授賞式には制作当時のモニターもご招待して喜びの声を届けました。
山中監督の長編初監督作品『あみこ』のバリアフリー版制作・UDCast対応をお楽しみに!