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ブラッド・ピット出演 『ブレット・トレイン』 への要望から実現した洋画の日本語字幕 #みんなの気づき

『ブレット・トレイン』への要望から実現した洋画の日本人キャストの日本語字幕

洋画が日本で公開される際に、字幕上映で「日本人キャストが話す日本語には字幕がつかない」という問題が起ることをご存知ですか?
外国語の翻訳には字幕が付くのですが、日本語には字幕がつきません。これが聞こえない・聞こえづらい観客にとって、映画鑑賞時の悩みの種になっています。

今回寄せられた相談は、ブラッド・ピット出演『ブレット・トレイン(原題:Bullet Train)』の字幕に関するご要望で、UDCastの鑑賞サポート相談窓口に以下のようなご相談をいただきました。

ご相談内容
「ブラッド・ピットが出演する『ブレット・トレイン』の字幕について、日本語字幕がついておらず残念です。なんとかなりませんか?」
相談時期:2022年8月末
相談方法:メール


本作は伊坂幸太郎さんの小説を原作とした日本が舞台のハリウッド映画です。真田広之さんをはじめ、日本人キャストが出演することでも話題になりました。
相談内容は、英語が話される場面では翻訳が字幕が付くけれど、日本語が話される場面では字幕がつかないのでご要望をお送りしたいというものでした。

聞こえない・聞こえづらい方々にとって、洋画の公開には必ず「字幕上映」があるので、実は洋画は邦画より身近な存在です。
しかし日本人が出演するとなると、日本語セリフには字幕がつかず、字幕を頼りにして鑑賞することができません。今回はまさにその状態でした。

やはり日本語のセリフに字幕は付いていなかった

寄せられたご要望を元に、相談窓口でまずは作品の公式サイトで確認をとりました。

WEBサイトには、バリアフリー日本語字幕としての情報は掲載されていません。
そして予告編の動画を確認すると、出演されている真田広之さんは英語を話すので字幕がつきますが、日本語を話す日本人乗務員や、ブラッド・ピッドが日本語を話す箇所には字幕がつきませんでした。

これらの状態から、本編でも字幕がついていない可能性が高いと判断しました。

■ 『ブレット・トレイン』予告動画

 

※こちらは1分のショートバージョン予告。ブラッド・ピットの最後のセリフ「どうもありがとう」に字幕が無い。

相談窓口から配給会社に問合せたところ、「日本語のセリフに日本語字幕はついてない」とのご回答をいただきました。
この状態を受け、配給会社に改善のご提案を窓口よりお送りいたしました。


UDCastの運営するオープンチャットでも本件は話題になり、それぞれが配給会社に直接要望を送り、自分たちの声を届けていこうという事態に発展しました。
SNSにも同様の声が上がり、多くの声が配給会社に寄せられたかと思います。

当事者からの共感が集まった松森果林さんのブログはこちら

 

「日本語の台詞にも字幕を入れて上映することになりました」 !

相談者よりご連絡いただいてから1ヶ月ほど経った9月の中旬頃、配給会社より相談窓口にご連絡がありました。

「先日お問い合わせをいただきました『ブレット・トレイン』の日本語字幕について、 9月23日より、2D字幕版のすべての上映において、 日本語の台詞にも字幕を入れて上映することになりましたので、改めてご連絡をさしあげました。」

なんと対応いただける旨のご連絡が届きました!
相談窓口からは、ぜひWEBサイトやSNSで公式として周知をして欲しいとお願いし、そちらも翌日にはご対応いただきました。

この字幕対応が大きな反響になりYahoo!ニュースにも取り上げられました。

「耳が聞こえない観客「日本語には字幕なくて分からなかった」と投稿 → 公式が対応(?) ブラピの映画「ブレット・トレイン」で起きた感動的な展開に注目集まる」

公開中の映画作品に対応がなされるという事態に、SNS上でも喜びの声が上がりました。
今回のご相談は、作品の作り手に多くの方々の声が届くことの大切さを痛感する機会になり、また配給側には、多くの人がサポートを必要としていることが届く機会になったと思います。

後日談: でも、セリフの字幕だけでは物語理解は難しい・・・

ただ、この話には後日談があります。

配給会社からご連絡をいただいた後日、難聴のスタッフとともに相談窓口スタッフで『ブレット・トレイン』を観に行きました。

確かに日本語に字幕は付きました。
しかしバリアフリー日本語字幕として制作されたわけではないので、素晴らしい対応ではあるものの、手放しに喜べるものではないというのが実感でした。
というのは、作品の演出として重要な音情報に説明となる字幕が無く、セリフの字幕だけでは物語理解が難しいと感じられたからです。

【相談窓口が気になった箇所】

  • ブラッド・ピッドが話す英語の「Thank you」もカタコトの日本語も、字幕は同じ「ありがとう」と表示され、あえての日本語を話す演出が伝わらない。
  • 車内アナウンスなど物語の重要なカギとなる音声に文字情報がつかない。
  • 物語終盤で流れる邦楽のBGMに歌詞や曲名などの音楽に対する文字情報がない。


これらを補うのがバリアフリー日本語字幕の存在で、私たちとしても、改めて重要性を認識する機会になりました。
「バリアフリー日本語字幕」についてはまた後日詳しく記事化していきます!

#みんなの気づき」では、皆さまからお寄せいただいた合理的配慮における日常の気づきやを記事にしています。もし身の回りでお困りのことがあれば、鑑賞サポート相談窓口にご相談ください。

鑑賞サポート相談窓口に相談

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記事を書いた人

執筆:大橋奈々 Palabra株式会社大阪オフィス/相談員
UDCastサポートセンター「文化芸術全般の鑑賞サポート相談窓口」の大阪オフィス担当。学生時代より海外文化や写真、建築をはじめとしたアート分野にも興味があり、看護師として勤務後、京都のアートイベントに携わる。2022年よりPalabra株式会社に入社。

編集:細貝由衣 Palabra株式会社大阪オフィス/相談員
UDCastサポートセンター「文化芸術全般の鑑賞サポート相談窓口」の大阪オフィス担当。ART COMPLEXでSTUDIO PARTITA立ち上げに携わる。ほか、アーティスト・イン・レジデンスや市民協型働事業などを担当。大阪の認定NPOにてファンドレイジング・PRを担当したのちに2022年よりPalabraに入社。

 


「他者を知る」シリーズ1 『もうろうをいきる』『コロナ禍の中での生活』 上映会のご案内 【入場料無料】

3月26日(日)に東京都狛江市の西河原公民館ホールで開催する 『もうろうをいきる』『コロナ禍の中での生活』 のバリアフリー上映会のご案内です。音声ガイド、日本語字幕付きです。
上映後の西原孝至監督と大河内直之さん(企画制作)の対談には手話通訳・要約筆記が付きます。
詳細は下記URLよりご覧ください。
https://udcast.net/workslist/mourouwoikiru-2/

もうろうをいきる ポスター

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